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“赤裸々” 

PRETTY DOLL

梶谷さんから野菜が届いた。
智子さんの同級生で広島ですし屋”大東”を営む女将が、
これだけ雨が降れば畑の野菜も大変でしょう・・・・・・。と、
ひょんなことから紹介を受けた農家さん。
僕の尊敬するシェフ達も使っているという。
前日に電話で話し、「熱い人だなあ」と思った。
どんな野菜が届くんだろう?
というワクワク感と、また、普通の野菜じゃないか?というあまり期待していない自分。

箱を開けた瞬間、まるで宝石箱のような、見たこともない野菜たちが目に飛び込む。
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「うわあ、何これ、すげえっ」
むっちゃテンション上がる。久々に野菜で興奮した。
ず~っと毎日畑に行っているから、パックの中の野菜たちを食べなくてもそれがどんなに素晴らしい物か見ただけで分かる。食べなくても分かる。

彼はうちの店を皿の上~で知っていたのかな?
僕のことをHP等で調べてくれたらしく、丁寧なお手紙も入っていた。
”変わっている”とは聞いていたが、想像以上。
素晴らしい経験をされてきている。
お父様から野菜を作られて35年、日本でもいち早く西洋野菜の栽培に取り組んだとても有名な方の息子さん。子供の頃からお父様の視察もかねて世界中の美味しいレストラン、三ツ星から路地の屋台まで食べ歩いてきているという。そのせいか、中学から留学。海外で野菜の勉強もして帰国して今、彼がこの素晴らしい野菜達を育てているんだという。
そして、素晴らしいレストランには素晴らしい農家さんがついている。と・・・

僕が思っていた理想の農家さん。
作りっぱなしではなく、誰が調理してどのような皿になり、お客様はどのように楽しんでいるのか?
それを理解できないと、これからの農業は厳しいと思う。
そして彼は、取引先のレストランでは必ず食事をしていてる。
当たり前だけど、中々出来ないこと。

僕は、いろんな食材をセレクトするときに、○○シェフも使っている、と言うのはほとんど気にしない。
「へ~」ってくらい。自分が気に入るか?気に入らないか?基準は自分。
だけど、自分が尊敬する人も認めている、と思うと嬉しくなる。
自分の野菜持ち込んで、パスカルバルボ氏に野菜コース作ってもらったというし。
すごい行動力のある人。
もう、鹿児島行きも計画していると言うから。

ただ、種蒔いて、ほったらかしの野菜、足の踏み場もない、畝すらも整地していない畑を僕はいいとは思わない。きちんと人が手を加えてあげないと美味しい野菜は出来ない、と思うから。
8月に家族を連れて広島に行こうと思う。
催事も含め、きっと一生行くことのない土地、と思っていた広島。
畑に行こう。大東も行こう。あ、ジャルダングルマンも行こう。
奈良も大阪も行きたいけど、まずは広島だ。



この野菜達を見て、うちも近い将来、ハウスを立ててもっと勉強して、こういう野菜も育てていかないと。
とも考えた。でも、台風の多い鹿児島ではしっかりしたハウスを作ると凄い投資になる。
うちの野菜は素晴らしい。これかも今までどおり育てていき、こいいう特別な野菜、ハーブは専門の人にお願いしたほうがいいだろう。
梶谷さんのハーブがあまり取れないという時期はうちが完全に時給自足できる時期。
これからの夏が葉物が全く取れない。
時期的にも調度いいというわけだ。

今まで、いろんなところからイタリア野菜とか紹介されていただいたりしたけど、凄い、と思ったことは一度もない。自分ちのが一番美味しい。
初めて人の野菜で感動した。そしてそれは自分ちでは作れない野菜たち。


ここ数日、ちょうど、いろんなことを考えていた。
TEXTRAS”マルト”を使った”飴”をやってみよう。とか、いろんなアイデアが浮かんできた。
まあ、いつもの仕込みに追われて中々時間がないんだけどね。
秋にうちで研修をしてそのままスペインへ飛び立つという神戸の藪中が結婚記念日にHAJIMEさんに行き、その写真も送られてきた。
やっぱすげえよ。もっともっと突き詰めていかないと、あの域にはたどり着けない。
やっとたどり着いたらきっと彼はもっと先を歩いている。だろう。
夜中、藪中ともいろんな話をして、僕自身のテンションもあがっえてきてた。

ヨシッやるぞっ。て

そこへ、タイミングなのか?だろうね。
きっと知り合うタイミングだったんだと思う。
彼の野菜が届いた。

何の装飾もない、ソースもない。ただ、ポンっと料理の皿の上に置かれただけのシンプルすぎる僕の料理。
「これ、どうやって食うんだよ?」っていうような、派手な、高さのある盛り付けとかではない。
HAJIMEさんや、akoudu、La cime、nomaのような、派手ではないけど、ステキな皿。
ああいう感じにしたいなあ、どうすればいいのかなあ?と、ちょっと悩んでいた。
でも、彼の野菜がそうしてくれると思う。
全部の皿をそうしたいわけではない。
チポッラはあれ以上何も足す必要も引く必要もない。
一方、鮎や前菜、メインの肉は少しだけ華やかにしたい。

いつも、手で、ガッガッて盛り付けていた僕、何度かピンセットでの盛り付けにもチャレンジしたんだけど正確に合わずに断念。
でも、バットに彼のハーブを並べると、ピンセットで持ってあげたい、と思わせる。
こいいう盛り付けに慣れていないけど、段々コツを掴むでしょ。

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まだまだだね。
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コレはいい感じかな?
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こういう使い方じゃないだろ?


僕の料理をもっと華やかに、もっと美しく、時には可愛らしくしてくれる梶谷さんの野菜。
きっと、僕がここ2・3年の大きな目標にしていることを実現するために、彼の野菜は必要不可欠だとおもう。
親父の野菜と彼のハーブでもっともっと心に残る料理を作れるとおもう。
前に進めると思う。

外は今日も雨。
あれだけ雨が続けば畑の状態も最悪。
でも考える時間はたくさんあった。
そして7月、28日で38歳になる。
もう、若手、とかではない。しっかりと結果を出していかないといけない。
7月は、予約もどんどん入ってきている。
楽しい7月になりそうな予感。



余談。
お世話になっている福岡で頑張るディール岡村氏との会話から。

よく、雑誌とかでレストランの紹介で、契約農家から仕入れる野菜。
とか書いてあるけど、”契約”って、契約書交わしてるの?契約金払ってくれるの?って。
表現が違うよねって。
いるときにいる物だけ買う。別に、農家が中々野菜が回らない時にそれらも引き取ってくれるのか?
もちろん、そういうレストランもあると思う。
たまに畑に行くって、たまに行って何が分かるのか?
毎日行かないと分からないと思う。行かないよりはまだまし。
僕は絶対に魚市場に行かない。
満田さんに任せてある。行っても分からない。
野菜には野菜のプロ。魚、肉にはそのプロがいる。


梶谷さんのとの会話から。

雑誌で、野菜を育てながらレストランのシェフ・・・・
無理だろ?野菜育てるって、そんなに簡単なことじゃないよ。
収穫だけじゃない。むしろ収穫までが大変。
親父は毎日草むしり。薬をまかないから。
2・3時間畑で仕事して、それで野菜育ててる、何て言ってたら農家さん怒っちゃうよ。

と、思います。

by cainoya | 2010-07-02 10:45 | THINK
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