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“赤裸々” 

今おもふこと

数年ぶりに購入した「専門料理」誌。
同世代の彼らの言葉にとても感銘を受けました。ただ、都会で何人ものスタッフを抱えたり、数店舗管理するシェフと地方のシェフでは根本的な考えというか?日常が違いますよね。僕には到底できない事なので凄いなあと感心しました。そんな日がくるのかな??なんて。。
一度しか飲んで語った事がありませんが、同じ地方都市であるVilla AIDAの小林シェフや方向性として同じなのかな??と思うラチェルバの藤田シェフの考えが響きました。
そんな彼等の言葉を自分に置き換えて、帰国後考えていたことをまとめてみたいと思います。



◼︎ガストロノミーとは何か??

何年も前から考えていますがよく分かりません。先日東京でバリバリのイタリア以上のイタリア料理を作るシェフとのメッセージでのやり取りでその「ガストロノミー」という言葉に対してそう思いました。
でも「イタリア料理での世界発信のシェフが日本人で居ないですので、是非ですね‼️」と背中を押してもらいました。

ガストロノミー、、「最新」や「美食」とかではなく、ジャンルにとらわれない「個の表現」だと解釈してます。要はやりたい事をやる。それが求められる料理やレストランでありたいということ。

もちろんイタリアにだって昔ながらの何も変わらない伝統料理のトラットリアも在りますし、逆に3・40代の若手シェフのお店は地方色にとらわれない自由でボーダレスな発想のお店をやっています。時代は変わりつつあります。その世界の流れを理解しつつ自分はどうあるべきか??
中途半端なイタリアやフランスの伝統料理のコピーに興味はありません。もうその時代は終わりました。先代達がやりました。この時代に自分が料理人であり店を構える存在意義とは??

僕自身イタリアでの経験もありませんし、勉強したお店もレストランというよりはカフェレストラン。20数年前鹿児島ではやっとパスタが広まりはじめ、アルデンテとはなんぞや??って時代でした。だから誰かっぽく染まらなかったのかもしれませんね。

そこからトスカーナでホームステイして、どっぷりトスカーナのコピーをする時期もありましたが次第にそれに疑問を抱きました。
そこからカノビアーノの植竹シェフなどイタリアで学んだことを日本で表現する方々の本を読み漁りました。レシピと考えを読み徹底的にコピー。同じ物を使う。

その頃から、商売として儲かるための営業よりもやりたい事を貫いてました。あの時普通に繁盛する道を選んでいたら今の自分はありません。その分家族を犠牲にしてきましたが。。

◼︎スタイル〜スペシャリテ〜作り込み過ぎない

スタイルなんて作ろうと思って出来る物じゃありません。スペシャリテだって自分が決めることじゃないしお客様がそう評価するもの。そこから進化させていくもの。

ガストロバックが代名詞になりつつあるようですが、その一方で肉の火入れよりも野菜料理の評価も高いようです。
でもね、野菜ブーム??だからとかそうしたのではありません。イタリアで習ったものを本で見た料理を再現する為に鮮度の悪い輸入野菜を使っていました。10数年前、サヴォイキャベツを仕入れた僕に対して親父がこう言いました。「畑にある白菜の方が美味いのに」でも当時はまだ、それを生かそうとは思いませんでした。その食材を使う事で満足していて個性の欠片もありませんでした。

前の店舗では一時期鹿児島産の物だけでメニューを組みました。生産者さんに会いに行き、メニューにその人達の名前を入れたり。それもまた食材に頼っていただけ。
しかし当時のお客様は90%地元鹿児島の方ですから、普段から食べている鹿児島の食材よりも短角牛や仔牛など普段たべれない物を喜ばれました。今は90%が他県からわざわざお越し下さるお客様で観光客ではありません。むしろその方々は僕の料理を食べにくるので僕が一番やりたい事をやればいいのです。

城山に移り、念願のレストランとして再スタートを切りました。これだけ流通の発達した時代ですから、日本中世界中の食材を集めました。畑で賄えない野菜は買いました。

現在のcainoyaでスペシャリテと呼ばれるお皿が幾つかありますが、その代表的な物が「ヴィシソワーズ」と「クリスタルサラダ」です。共に野菜が主役です。そうしようと思って作った皿じゃありません。これらが生まれた背景はズバリ、

《お客様が来なくて売上げがないから仕入れが出来ない。なら畑にある物で作るしかない》

そこから生まれた皿達です。本当です。
尖り過ぎてたのか??
価格と内容のバランスも悪かっただろうしお店としての完成度も低かった。。

買ってきた野菜で再現するスープはコストが掛かるから、畑で採れたジャガイモで何か出来ないか??と考えて先ずは冬の温かいジャガイモのスープに旬の牡蠣を添えました。安いありきたりの食材と旬の素材を組み合わせる。
そのまま春に冷製にしました。翌年だったかバターとパルミジャーノのジェラートを添えて胡椒を削りました。その翌年に胡椒を泡にする事をおもいつきました。ここから一気に評価が上がりました。関西でのイタリア展イートイン大阪と京都でこれを出したところメチャクチャ評価されました。秋口まで出し続けましたが、理由は作り過ぎたから。。でもそれが更に評価を高めました。

先日お越し頂いた中村チェアマンからは「全部美味しいけど、このヴィシソワーズには驚いた。完成されている。これはシグネイチャーとして通年出すべきだ、世界に通用する皿だ」と評価頂きました。それでも仕込みを変えます。もっと美味しくならないか??

今は、焼いた芋と蒸した芋を合わせて仕込んでいます。ヴィシソワーズ自体にバターは使いません。ジェラートで補います。あの真っ白のヴィジュアル、白のグラデーションも作り込まない、敢えてそこで止めるのです。
一皿の中の要素をできる限り減らす。
必要な物だけを乗せる。
作り込み過ぎない。
この歳になってそう思えるようになりました。足りない??位がちょうどいいと。。

冷製だけどザラザラ感ゼロだけどしっかり芋の味を感じる。しかも冷凍保存した芋を解凍したら普通はどうなるか??そこにはこれまで培ったノウハウが生かされています。スチコンとショックフリーザーを使うのです。
クリスタルサラダはね、、同じ様に、野菜使い切れないからどうしよう??ならお口直しのサラダにしようって思ったんですよ。
ただ、こういった皿は進化させていかないと古くなります。

◼︎JAPAN QUALITY

今年は既にシンガポールとイタリアでシェフとして仕事をしました。もちろんそれで終わりではなく、繋げていく為に行きました。
僕自身の目標とチャレンジの一つとして、44歳から45歳までの一年間、日本を出て海外で勝負をしたい。自分がどこまで通用するのか?試してみたい。そう思っています。
年齢的にラストチャンスだと思っています。その為にこれからも海外での仕事をやって行きます。その一年間はランチとお弁当だけでもスタッフでやれる体制を作らないといけませんね。そして日本に帰ってきて、実働時間をこれまでの半分にして海外にも出ながらもっと自分のペースで仕事をやって行きたいと思います。

made in japan〜
トップレストラン達が国産の食材だけで表現を始めています。トリュフは例外ですが、フォアグラを外すフレンチも増えている様です。それが世界に打って出る日本のレストランの在り方かもしれませんね。
でも僕はそれもバランスだと思います。
国産で明らかにカバーできないクオリティの物、国産ではない物は輸入品を使います。
キントア豚を使ってきましたが、まだまだこれからだけど福留牧場の豚に変えました。
しかしシャラン鴨だけは到底国産では追いつけない。。でもそれ以外のお肉はボーヤファーム、北の里自然牛、ヨーロッパに負けない食材が揃いました。
魚も藤本君から神経〆の最高品質の物が届く様になり、鮎も棚田さんから。国産の顔の見える最高の食材が届きます。

オリーブオイルやトリュフはやっぱり輸入品を使いますし、フォアグラは少量で個性を出しやすい食材です。ワインだって国産はまだまだ。。値段とクオリティが合わないし自分が美味しいと思える物だけを使いたい。
そして何よりも、この20年間ものすごい努力で現地と交渉して日本にヨーロッパと時差のない食材を運んできてくれたインポーターさん達に対して、僕はキチンと使いたいのです。バランスですよね。

野菜。
地産地消バランスNO✋と言い続けてきました。納得のいく食材がないことや、他店との差別化だったり、でもベースにあるのは畑の野菜だから。。賄えないものは取り寄せました。何年前かな??畑のものだけでやる‼️なんて言ってた時期の夏に智子さんの同級生の広島でお鮨屋さんを営む方が来て、野菜が取れないと嘆いていたら梶谷農園を紹介してくれました。
しかしこれだけ雨が続くと畑では何も取れませんし、スーパーで売ってる野菜も他県の物です。野菜は鹿児島産に拘らず国産であればいいのかな??と思います。畑以外のものに無農薬はこだわりません。そんなこと言ってたら生きていけませんよ。なら貴方の身の回りのもの全てがそうですか??って。。ねえ。。

〜Japan Quality
日本でずっと、レストランをやり続けるのなら、とことん食材にこだわって、◯◯はどこ産の、誰々さんのしか使わない‼️なんてのもアリですよね。シンガポールは全てそれらを仕込んで送り込むことが出来る国です。
しかし今回のイタリアで思い知らされたのは、思う食材は簡単には手に入らない。目の前にある物でどうするのか??ということです。これしか使わない〜とか言ってたら海外では何も作れません。レシピがあってもその土地に、水に合わせてやらないといけません。応用力も必要ですし、自分自身のフィロソフィーをしっかりと持っていないと何も出来ないのです。

これから、僕が海外に出るに当たってコンセプトとして《JAPAN QUARITY》があります。国産で固める、というのとは違います。
僕の仕事、作る料理それらが全てジャパンクオリティであり、日本人らしさを前面に押し出したコピーではない表現だと。そうありたいと強く思います。
ですから、仕込みの一部に輸入品が入っても構わないしそんな枠組みは作りたくない。
もしいつか海外でレストランが出来るのなら、カマチのお皿やスガハラのガラス製品を含めジャパンクオリティで揃えたい。キッチンは日本人を中心に固めたいと思います。

こういう想いを言葉にしてきたから一つ一つの仕事が来たんだと思います。黙ってて、内に秘めてても形にはならない。細々と運営していく為なら必要ありませんけどね。。
これからもっともっと、海外にでて経験を積んで刺激を得て鹿児島に帰り自らと向き合い自分にしか出来ない表現を強くしていきたいと思います。

by cainoya | 2015-06-30 14:18
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